のだめカンタービレ(8) (ISBN: 9784063404760)
こんなに笑えるクラシック音楽があったのか!?
指揮者を目指すオレ様・千秋真一と落ちこぼれ変態ピアニストのだめ(野田恵)が奏でる笑いと愛の青春ラプソディ。ダメダメ・ヴァイオリニスト(自称千秋の親友)、ドイツのエロジジイ(世界的指揮者)、乙女なティンパニー奏者(男子)など……音大に大集合した奇人変人たちが、世界でいちばん笑える、そして美しい音楽を紡ぎだす。大爆笑の学園クラシック・コメディー!!
羽ばたく千秋に のだめ、追いつけるのか!?
飛行機恐怖症のため日本から出られないままの千秋だったが、その迷いをふりきり、R・S(ライジング・スター)オケの公演で大成功をおさめる。そんな千秋に贈られた、のだめからの切ないプレゼントとは……?初めて明かされる千秋のトラウマの正体。のだめのコンクール挑戦。大きく動き出した運命の流れは、どこへ……?
(購入者のレビュー)
「PTSDではなく罪悪感だった」
千秋の飛行機恐怖は一見PTSDに見えるが、のだめの催眠により、老人を助けられなかった罪悪感ゆえのものであったと判明する。そしてその当時の記憶はビンというものに隠蔽されていた。
フロイトは1899年に「隠蔽記憶について」という論文で、「覚えている記憶に意味はなく、それに関連する周囲の記憶に意味がある」としている。基本的には抑圧であるが、その外傷体験に直面していくことは千秋にとってはとても苦しかったのだろう。そして、それを抑圧し、その代わりに外傷体験と時間的に近接したその他の事柄のみを記憶していたのである。この辺りが千秋の深い絶望感と結びついているのかもしれない。
精神分析ではこのような記憶を隠蔽記憶と呼び、神経症治療の一つの手がかりとしてる。そして、精神分析療法を通して、抑圧された記憶を掘り起こし、扱えるようになっていくのである。
また、千秋は今まで様々な治療や民間療法を試してきたが、「ガードが堅い」ということで、効果はなかった。しかし、今回はのだめの素人催眠術がうまく行ったのは転移/逆転移の文脈で理解できる。
千秋はのだめを献身的に世話をするのは、老人を助けれなかった罪悪感から来る償いという文脈で理解できる。このような感情を現在の対象であるのだめに転移している。さらに、のだめも千秋を何とか助けたいという強い気持ちを抱いている。これはのだめの個人的感情というよりは、千秋との関係の中で増幅された逆転移と言える。
ここに治療者-患者間にリアルに現れた転移/逆転移を見ることができ、それは過去の千秋の外傷体験の再演ということができ、この中で行われた催眠術は今までの千秋が受けた治療や民間療法とは質的に違ってくる。
「成功の二重奏」
千秋のR☆S(ライジングスター)オーケストラの成功、そしてのだめのコンクール本選への出場。二重の喜びの巻です。
千秋は成功して当然という雰囲気がありますが、のだめはいつも駄目でコンクールを乗り切れるのかとひやひやさせてくれましたが、それでも執念なのか突破していきます。
のだめの目的はどこにあるのでしょうか。千秋と海外に行きたいから?
そういえば、のだめが稚拙な催眠療法を千秋に試みます。なぜ、プロでもないのだめの催眠術にかかってしまうのかは謎ですが、それでも飛行機に乗れた千秋にとっては朗報なのでしょう。
でも、催眠術でカニを買わせるあたりが、のだめらしいと笑いました。
「のだめ覚醒」
第8巻は「のだめの覚醒」をメインに描く。
マイペースが信条であったのだめが音楽の照準をコンクールにセットした。
原因は何か?
大盛況のうちに終わったR☆Sオーケストラの影響なのか。
あるいは千秋の音楽にかける情熱にあてられたのか。
もしくは先行する千秋に追いつけ追い越せの精神でがんばっているのか。
いずれかではなく全て該当するだろう。
がんばっている人は周囲の人に良い影響を与える。
これはまさにその典型なのだ。
眠れる巨人ならぬ、眠れる森の美女を覚醒させた千秋の才能は計り知れないものがある。
同時に目覚めた姫の才能も負けず劣らず豪快かつ雄大である。
この二人が織りなす音楽のドラマの行く末が楽しみだ。
最近出番の少ない裏軒パパ&真澄ちゃんに代わり、ハリセン妻さんのがんばりが目立ちます。
こういうお笑い担当のバイプレーヤーは、この作品に欠かせない存在です。
「爆発する第八巻!」
堅苦しいクラシック音楽の世界を、決して貶めることなく笑えるマンガに仕上げた手腕は、高く評価されるべきだろう。
『のだめカンタービレ』爆発する第八巻である。
本巻は『のだめカンタービレ』前半日本篇のクライマックスであり最も心躍る巻であることは衆目の一致するところだろう。
主人公千秋真一の立ち上げた、R・S(ライジング・スター)オーケストラの初演は大成功をおさめた。
そして再演も行われ、注目を浴びたR・Sオケには優秀な入団希望者が詰め掛けるのであった。
一方の主人公のだめも新しい指導教授のもと、ピアノコンクールに挑戦する。
「渾身の出来。」
「日本でまだやることがある」そう信じる千秋真一のR☆Sオケデビュー公演のメイン曲、ブラームスが非常に感動的に描かれています。公演を聴き、涙を流すのだめ。それだけの説得力のある迫力が紙面から伝わってきます。
そして、のだめはシュトレーゼマンから受け取った(であろう)懐中時計を使って、千秋のトラウマを堀り起こします。非常に繊細で神聖な、これまでののだめに観られない美しい描写です。
それと同時に、遂にのだめが音楽に対して真剣に向かい合います。
「音楽に正面から向き合わないと音楽を心から楽しめませんよ」
というシュトレーゼマンの言葉通りに。
作者が渾身の力を込めて描いている、物語の核ともいえる巻です。
是非読んでみて下さい。
「”のだめ”が」
おそらく前半の山場となる巻です。ライジングスターオーケストラの初演は約50ページをかけて描かれます。できたばかりの海のものとも山のものとも知れないオケ、他の出演者に比べるとこれまた全く無名の千秋に、偉い評論家の先生やたまたま見に来ていた世界的な音楽家などが驚くシーンはこの作品ならではのカタルシスがあります。
ここはやっぱり実際に彼らが演奏した曲を聞いて、その場面を想像しながら読むのがいいでしょう。
黒木君はモーツァルトのオーボエ協奏曲をどんな風に歌いはじめた(モーツァルトの協奏曲はフィーチャーされたソロ楽器の歌い始めが聴きどころです)とか、ブラームスの交響曲一番の白眉である第四楽章、静謐なコラールからラストにかけて千秋はどう振ったのか、とか・・・。
さてさてこの巻はそれだけではありません。
“のだめ”が千秋にあることをしてあげます。このシーンは儚げで、とてもとても美しいです。
ベルリンフィルの元コンサートマスター、カイ・ドゥーンが千秋のオケの練習に参加するシーンもまた音楽に対する考え方がきちんと描かれている名シーンなのではないでしょうか(シュトレーゼマンにもこういうシーンがありましたね)。この作品が安心して読めるのはこういう部分がきちんとしているからだと思います。
そして、千秋の成功の次は、“のだめ”の番です・・・。
